第97話恥知らず

リリーの視界は滲んでいたが、スカーフェイスが持ち歩いている金属製の箱から、小さな薬液の入った注射器と、透明な液体の入った小瓶を取り出すのが見て取れた。

手慣れた動きで彼は針先を瓶のゴム栓に突き立て、無色の液体を吸い上げると、ぷつぷつとした気泡を押し出していく。

薄暗がりの中で針先が不吉にきらりと光った。まるで蛇の牙のように。

「や……やだ……お願い……やめて……」リリーは弱々しくすすり泣き、恐怖に震える声が喉から漏れた。反射的に身を引こうとするが、背後の冷たい壁が逃げ道を塞いでいる。

禿頭の男が不気味な笑みを浮かべて一歩踏み出し、傷のない逞しい腕でリリーのか細い肩とばたつく腕を押さえつ...

ログインして続きを読む